バイクに乗る前に・・・?免許が無い!?
第五話

1997年5月の話

いよいよ作業も大詰めだ。エンジンオイルはとりあえずホームセンターで見かけるバルボリン約1リッターで400円を切る安さ。こいつをエンジンにぶち込んでから、フォークオイルの交換だ。XSやGX250/400のフォークの上の蓋はなんと外しにくい構造か?一人でばらすのはかなりしんどいものである。

だが俺はマスターしたぜ、このフロントフォークの蓋を外すコツを、この蓋と格闘する事半日近く、俺はわかったぜ!
センタースタンドを立てて、さらにフレームの下をジャッキで支え、フロントフォークのみをアンダーブラケット(三つ又)に取り付けて、車体に跨り、蓋をプラスドライバーの3番ぐらいの太い奴で握りながら胸でドライバーを抑えつける、 その間に細く小さなマイナスドライバーでC-リングを外すのだ。取り付けるときはこの逆の工程を踏めばよい。

フォークを外し中のオイルを流しだすと、もうそこはヘビーメタルな世界との遭遇だ。
あまりにも強烈な匂いを発しているのでサッサと灯油で洗い、オイルを換えちまう、油面もいろいろ換えてみたが、自分では規定油面にヤマハのフォークオイル15番が一番良かった。

わけもわからずこんな物かと油面を30mmも上げて試乗してみたら、そこは即席カスタムの世界が広がっていた!
ちょっと走って段差を乗り越えたらガツーン!なんと気軽にリジットフォークの出来上がり・・・
やっぱりむやみに油面上げたりするのは良くないようだ、全くフォークが動かなくなる。

灯油を使ったついでに、チェーンもスプロケも灯油で洗う、チェーンはシールなしだから洗浄は灯油でOK。
ピカピカになって組み付けるとなんと気持ちのいいことか。

でもそのうちシールチェーンにしたいもんだけど・・・これで一応一通りの公道へ出るための準備は整った。
はずだったのに・・・なんと新品のバッテリーが上がり気味になってきたのだ。テスターで各部を調べると レギュレターがお亡くなりになられていたのだ。

おそらくバイクが燃えたときの後遺症ではなかったのではないかと思っている。 本当にシート下が火達磨になったからなー。この当時既にレギュレターは一個2万5千円にも跳ね上がり同時にこの部品は欠品中、あーあ充電されなかったら走れないじゃないの!

公道への道のりは果てしなく困難であり、長かった。
二輪免許は原付しか持っていなかった俺にとって、バイクを破壊&炎上させた上に更なる 故障発見で、窮地に立たされた。

「なんでこんなに苦しむんだろう?多くの人がバイクを買う時代に、中型免許さえない俺は一からやりなおし、壊す→直す→壊す・・・何度繰り返しただろう?常に目の前に立ちはだかる山は果てしなく高い。
何度も苦い経験を繰り返し、挫折と向き合い、戦った!」
本当に何度諦めてXSを捨てようとしたことか・・・

だが俺は諦めない!ありとあらゆる車種のパーツリストを眺めるうちに電気回路が分かってきた、そう常に探求心が俺を支え続けたのだ。
多くの人は電気系は分からないと諦めちまうが、それは残念である。分かればこれほど修理に役立つ知識は他に無い。

レギュレターの働きをマスターして、最終的にはしばらく他車種のレギュレターをつけていた。
充電電圧が規定内に収まればまあ何でもいいだろうってな具合でね。これで難なく公道に出れるわけだ!

ムムムーッ、だが待てよ、ウオーッとまだ二輪免許持ってなかったぜ・・・

ここいらまで修理を重ねるとかなりの自信がつく、すでにどういう訳か何人かの仲間の間では俺がバイクの免許を持っているものだという勘違いの風が吹いていた、嘘をつくわけにもいかずに正直に「免許持ってないよ!」と言う度にみんなが信じられない表情を見せた。

「免許無いのに直してるの?」と不思議そうな表情をするが、俺は答えていたよ、いつも同じセリフをね!
「一から全部自分の力だけで直して、それから免許取ってこのXSに乗るんだよ、俺は!」と・・・

バイクに乗る前に・・・?免許が無い!?第五話完

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