永遠の色・第十七話

XSもある程度安心して走行出来るようになったので、そろそろボロイ外装に嫌気がさしてきだしたところ。

深緑色のGXノーマルタンク(XS日記第14話画像参照)に亀裂が入りガソリンが漏れるようになった上に、わずかながら凹みもあり、このままでは再度使用する気にもならなかったので、どうせやるならオリジナルペイントを探求してみようと思いを巡らしていた毎日・・・

いっそのことXS−1のキャンディーグリーンに白ラインにしようかと考えたりもしたが、本家XS−1と同じカラーにしてところで、せっかくのオリジナルペイントが映えないので「うーん」と唸りながら国内4大メーカー絶版車カタログばかり眺めていたのだが、XS−1=キャンディーグリーンはSR限定バージョンで復刻されるとの情報が入ったので決定的に候補から外すことにした。

個人的には旧車は渋めでいぶし銀のカラーが好きだったのだが、カスタムペイントしようといろいろと眺め出したときに、なんと言ってもK0=CB750から一連のホンダのキャンディーカラーや、スズキのキャンディーイエロー、そしてXSのキャンディーグリーンに代表される鮮やかなキャンディーの色合いに惚れ込んでしまい、どうせ塗るなら、最難関を極めるキャンディーカラーに挑戦してみようと思い立ったのだ。

塗料を吹き付けるためのスプレーガンに慣れる為に、まずはメットで試し塗りをして練習した。現在使用中のエメラルドグリーンのジェッぺルがそれである。(=通称ボーリング玉) 2液性のウレタンの塗りやすさ、塗膜の頑丈さを経験すると、もうこれまでのラッカーは使えない。ラッカーはすぐ剥がれるし、みすぼらしくなるし・・・

塗装の手順で一番言われることは下地の重要性だが、本当に下地の仕上げが一番時間が掛かり、地道なところであった事は経験して初めて分かったことである。

オリジナル塗装を剥離剤で落とし、タンクのエクボや傷をパテ&サーフェイサーで処理しながら、ツルツルの下地を作り出す。プラ製のサイドカバーには剥離剤は使えないので、地道に耐水ペーパーで旧塗膜を剥がしていく。同じくサフでツルツルの表面を作り出してからが、キャンディーカラーへの執念の始まりだった。

サフを吹いておけば表面は錆びないので、その間にタンク内部の錆び取りもついでにやってしまう。 零円自作主義を貫徹するものは錆び取りはサンポールを採用すべし!!間違っても市販のタンク専用錆び取り剤は使わないのだ。サンポールを5本程(=800円くらい)買い込んで、湯煎で、サンポールを40度程に暖めるのがポイント。化学平衡を考えれば分かるのだが、暖めると反応速度は早くなる。 ここで良く、錆び取り後の地金の処理はどうしたの?と突っ込まれる事もあるのだが、心配は要らない。何故なら、錆び取り後、処理をしないままにかれこれ3年近く経つが、タンク内は全く錆びていないからだ。

初めにサンポールを三本ほどぶち込んで、タンクキャップやコックにふたをして、ひたすら掻き回すこと約五分、地金が露出しピカピカになるのが確認できる。まだ、隅の溶接で合わされた部分に錆びが少々残っていたので、さらに二本のサンポールを投下する。で、また五分ほどシェイクして、タンク内に水を流しっぱなしにして、完全に酸を取り除く。

ボロタオルを中に入れて、できる限り水分を取り除いた後に、ヒーターで乾燥させれば特に錆びの再発の心配も無かった。心配なので、一応水抜き剤を投入しておくことを忘れなかった。ここで、タンク内をオイル漬けにしようかとも考えたのだが、これから塗装をするのに万一、表面にオイル分が漏れると非常に厄介なので、水抜き剤がベストだと判断したのだ。これで中も外も下地が完成したことになる。

いよいよ塗装。まず、ベースには目の細かい、ギラギラ感の少ない銀色を塗る、これが最終的には透き通って見えるので、一発で綺麗に仕上げるのがコツなのだ。ここで、荒目の銀色を選択、もしくはラメラメにするとXS族車の出来上がりになるのだが、そいつぁー好みではないので、目の細かい銀を選択するのがポイントなのだ。

シルバーは、塗ってからペーパー等で砥ぐと色合いがおかしくなるので、少し遠目から塗りっぱなしにしておくと良い。その上からクリアーを捨て吹きしておいてから、表面をまたツルツルに砥ぐ、これは私の場合2000番の耐水ペーパーで作業した。

何故クリアーを捨て吹きしておくか?というと万一その上に違う色を重ねて砥いでいった場合に、下地まで削りすぎる心配も減るし、その都度凸凹の無い均一な表面を作れるからである。

シルバー外装を目指すなら、ここで終わるのだが、キャンディーカラーはまだ下地の作業になる。で、いよいよ、ここからがキャンディーカラー塗り初めだ!

まずクリアーに黄色の染料を混ぜる。指定比どおりに混合し、外装に吹き付ける。吹き付けるポイントはコッテリと塗り、反射されて見える蛍光灯が、塗料が垂れて一瞬ゆがみ出すところでガンを離すところだろう。ここを見極めないと、液垂れになるし、薄く吹いても艶は出ない。

一層塗るごとに二日休んで、艶と深みを出すためにまた一層塗って二日休んでをなんだかんだで約10層繰り返し、ようやく納得行く深みが出来上がった。ここまでの作業で三週間も掛かってしまった。

塗ってる最中はウレタンの匂いで中毒⇒朦朧としながらさらに塗る⇒さらに朦朧とする。の悪循環であったが、本当に中毒症状が出るので、防毒マスクは必着の作業である。

そして、単色では面白くないので、ラインを入れる。ラインもいろいろ考えたのだが、やはりXSにはXSの三日月ラインがベストだったので、それを採用する。

綺麗にラインを入れるコツは、左右対称に、そして確実に隙間無くマスキングテープを貼る事だ。曲線用の値段の高いマスキングテープが使いやすかった。で、黒いラインを入れる部分を残して全てマスキングし、黒を吹き付けていく。大分乾いた頃合を計ってマスキングを上手く剥がしておくのが良い。そして二日ほど乾燥させると、完成時のイメージがより現実的になる。

普通なら、ここで塗装完了と思うかもしれないが、ここで手を緩めたら、やはり素人止まりになるので、手を緩めることなく次の作業へと向かう。

まだ黒く塗った部分とイエロー部分に段差が生じているので、今度はそれを埋めるのだ。ということで、またクリアーの捨て吹き!!で、クリアーを吹いて乾燥させてから段差のある部分を全体的にひたすら砥いで行く。段差を取り切れない場合はさらにクリアーを捨て吹きする。計二度ほどクリアー捨て吹きした後に完全に段差を取り除き、最後に仕上げのクリアーをコッテリと塗って完成!!

塗料のみでシルバーから計14層ほど、サフも合わせて15層近くにもなったが、重厚な仕上がりには我ながら大変に満足した。完成までにまる一ヶ月の月日が経ってしまった・・・

さらに、同時期にYAMAHA&Special立体エンブレムの塗装も行った。元は金色なのだが、キャンディーイエローに金色のエンブレムでは映えないので、黒い縁取りに銀色で塗ることに決定。メッキのように付着する金色を剥がして、ヤスリで荒らして、筆で塗っていくのだ。そして、やはり仕上げにクリアーを吹いて完成!

今思えば過酷な作業だったが、ようやく自慢のキャンディーイエローの外装が仕上がったことには大変に満足している。

さて塗装してみての感想は・・・?

出来ることなら、もう二度と塗りたくないです・・・34歳主婦

プロに任せた方が楽でした・・・53歳会社員

時間の無駄でした・・・39歳僧侶

塗装中毒症状を引き起こし病院に運ばれた為に無回答・・・44歳患者

安上がりで、完成度の高さに大満足です・・・当時23歳某XS好き青年=soulucg

というような結果でした。(全国1千万人XS&GXファン回答soulucgリサーチ調べ)

それはさておき本当に塗ってから何年か経つが、ラッカー塗りっぱなしにはない、その高い耐久性には目を見張るばかりで、今なお輝きを放つ姿をみれば、だれもがウレタン塗装の素晴らしさを納得するに違いない。

「あー、いつかまた塗装にチャレンジする時は何色にしよーかなー??」

ついでにあの娘のハートも俺色に・・・くっさ〜 おそまつ

永遠の色・第十七話完